初夢の縁起物として知られる「一富士二鷹三茄子」。
お正月になると耳にする言葉ですが、
「その先はあるの?」
「四つ目、五つ目って何?」
と気になったことがある人も多いかもしれません。
実はこの言葉、三つで終わるのが定番でありながら、
四つ目以降についてはいくつも説が存在します。
この記事では、
- 一富士二鷹三茄子の基本的な意味
- なぜ「三つ」で止まるのか
- 語られることのある“四つ目以降”の中身
を、民俗的な背景からわかりやすく整理します。
一富士二鷹三茄子とは何か
「一富士二鷹三茄子」は、
初夢で見ると縁起が良いものを順番に並べた言葉です。
- 一富士:日本一高い山、霊山としての象徴
- 二鷹:高く舞い、力強い鳥
- 三茄子:「成す(なす)」に通じる言葉遊び
共通しているのは、
「高い」「めでたい」「事が成る」といったイメージです。
江戸時代にはすでにこの言い回しが広く知られており、
とくに駿河(現在の静岡)ゆかりの縁起物と結びつけて語られることもあります。
なぜ“三茄子”で終わるのか
実はここが一番大事なポイントです。
結論から言うと、
一富士二鷹三茄子は「三つで一まとまり」だからです。
「三」は日本文化で安定した数
日本文化では古くから、
- 三種の神器
- 三位一体
- 三段構え
など、「三」で区切ることで意味が完結する感覚があります。
一富士二鷹三茄子も、
語呂・リズム・意味のまとまりが三つで完成しているため、
それ以上を続ける必然性がなかったと考えられます。
それでも語られる「四つ目以降」の説
とはいえ、江戸後期以降には
「その先」を面白がって付け足した説がいくつか登場します。
代表的な続きの例
- 四扇(しおうぎ)
- 五煙草(ごたばこ)
- 六座頭(ろくざとう)
これを並べると、
一富士二鷹三茄子
四扇五煙草六座頭
となります。
それぞれの意味(とされるもの)
- 扇:末広がりで縁起が良い
- 煙草:煙が立ち上る様子が運気上昇を連想させる
- 座頭:当時の職能身分を指し、「毛がない=怪我ない」に通じる語呂説
ただし、これらは後世の言葉遊びや洒落の色合いが強く、
初夢の本来の意味として定着したわけではありません。
なぜ四つ目以降は定着しなかったのか
理由はいくつか考えられます。
① 語呂とリズムが弱くなる
「一富士二鷹三茄子」は、
音の流れが非常に美しく、覚えやすい言葉です。
四つ目以降を続けると、
言葉としての完成度が下がるため、
広く定着しにくかったと考えられます。
② 初夢は“占い”というより“縁起担ぎ”
初夢は細かく分類して吉凶を占うものではなく、
ざっくりと「めでたい」ことを重ねる行為です。
三つあれば十分、という感覚も自然です。
③ 後付け感が強かった
四扇以降の説は、
江戸の洒落や読み物的な要素が強く、
民間信仰として根付くほどの必然性を持ちませんでした。
まとめ──「先がない」こと自体がポイント
- 一富士二鷹三茄子は、初夢の縁起物を表す言葉
- 本来は「三つで完結」する構造
- 四つ目以降には諸説あるが、後世の付け足し
- 先が定まらないのは、民俗的には自然なこと
「一富士二鷹三茄子の先は?」と気になるのは自然ですが、
実は“先が決まっていない”こと自体が、この言葉の正体とも言えます。
初夢は細かく分析するものではなく、
一年の始まりを気持ちよく切り替えるための、
軽やかな縁起担ぎとして楽しむのが一番です。
